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東京高等裁判所 昭和52年(ツ)60号 判決 1977年11月01日

上告人 共栄質屋協同組合

右代表者代表理事 田尻丹次郎

被上告人 藤平政康

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一ないし第三点について

原審が、利息制限法所定の制限を超過して契約された利息及び遅延損害金は右制限を超過する部分につき無効である旨判断した第一審判決を支持したことは正当であって、その判断過程に所論の違法はない。

所論は、上告人は出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(以下、出資等取締法という。)により届出をした貸金業者であるから、その契約もしくは受領しうる利息又は損害金については特別法たる出資等取締法が一般法たる利息制限法に優先して適用されるべきであり、したがって、利息制限法所定の制限を超過する利息又は損害金であっても、出資等取締法の制限に反しない限り、これを契約しもしくは受領することは適法正当として許されるべきであるというものである。

しかし、出資等取締法は、不当に高い利息又は損害金を契約しもしくはこれを受領した者に対して刑罰を科することを主な内容とするのに対し、利息制限法は、元本の額ごとに許される利息又は損害金の限度額を定め、その制限を超えて利息又は損害金が契約された場合の私法上の効力及び実際にその支払がなされた場合の返還請求権の有無についての規定を内容とする。したがって、出資等取締法と利息制限法とは規定の目的及び性格を異にすることが明らかであり、しかも、出資等取締法は、その制限に反すると否とを問わず、契約されもしくは実際に支払われた利息又は損害金の私法上の効力については何らの規定もしていないから、両者はとうてい特別法と一般法の関係にあるものとはいえない。それゆえ、上告人が出資等取締法により届出をした貸金業者であるからといって、その契約しもしくは受領すべき利息又は損害金については、出資等取締法が利息制限法に優先して適用されるものと解することはできず、右契約の私法上の効力及びその請求権の有無については、営業の種類やその規模には関係なく一律に利息制限法が適用されるものといわなければならない。そして、利息制限法は、同法所定の制限を超えて利息又は損害金が契約された場合には、その超過部分につき無効とする旨を明文をもって規定しているから(同法一条一項、四条一項)、原審が本件で契約された利息及び損害金のうち利息制限法所定の制限を超過する部分につき無効である旨判断した第一審判決を支持したことに何らの違法はなく、又、このように解したからといって、財産権を保障した憲法二九条一項の規定に違反するものではない。

所論は独自の見解であって採用できない。論旨は理由がない。よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉岡進 裁判官 前田亦夫 太田豊)

<以下省略>

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